宅地建物取引業法の改正。2018年4月1日に何があったの?

新しくなった宅地建物取引業法

法律は私たちの暮らしをよりよくするものであり、必ず守らなければなりません。

たとえば刑法がなぜあるかと言えば、犯罪をしっかりと防止し、私たちが安全に暮らすために他なりません。

同じように建物の売買をするにあたっても法律があり、それが宅地建物取引業法です。
この法律がなければ私たちは公平に住宅を買うことはできません。

ただ、法律は時代が流れるにつれて古びてしまうことがあり、マンションなどは日本にとって比較的新しい住居形態なので、和風の家が中心だったころに作られた法律では対応できないでしょう。

そのため、法律は定期的に塗り替えられていったのです。

そして2018年4月1日に、この宅地建物取引業法も改正されました。
しかし、住宅の取引に興味がない人にとっては、この改正はどんな意味を持っていたのか分かりづらいものだと思います。
仮に改正以後住宅やマンションの売買に興味を持ったとしても、法律に詳しくなければどんな内容か理解しづらいでしょう。

そこで、今回はこの宅地建物取引業法の改正がどのような内容であるかを詳しく説明していきます。

どんなことが改正されたのか?

2018年4月1日の改正建物取引業法で目玉となったのは「ホームインスペクション」に関する文言が盛り込まれたことです。

ホームインスペクションとは建物を購入する前に住宅の状況を検査する、いわば住宅の健康診断と言われています。

法改正により不当な売買が行われないよう防止するのが目的ですが、実は今までこうした内容は法律に盛り込まれていませんでした。
それが、この度の法改正により住宅の買主がホームインスペクションを利用しやすいように変更されたのです。

宅地建物取引業法に盛り込まれた文言を大まかに要約すると、以下の3点となります。

  • 媒介契約締結時、インスペクションを実施する者の斡旋に関する事項を記載した書面の交付
    不動産業者は必ず契約者にインスペクター(インスペクション実施者)を紹介できるかどうか、書面を用いて説明をする義務です。
    これにより、ホームインスペクションを知らなかった消費者の利用促進が期待できます。
  • ホームインスペクションによって出た結果は買主等に対し重要事項説明に盛り込み説明しなければならない
    従来はホームインスペクションを行った結果内容が、不動産業者が物件を売り出す前に必ずしも買主にまで届くとは限りませんでした。
    今回の法改正によって、ホームインスペクションの結果は誰もが知れるものとなったのです。
  • 売買契約締結時に建物の調査状況を売主、買主双方が確認したことを契約の文書に盛り込まなければならない
    これによって売主も買主も、そして不動産業者も建物の状態を知ったうえで契約を行えるようになり、未然にトラブルが防げるようになりました。
    いずれも建物の売買をスムーズに行えるようにした文言であって、大変有意義な改正と言えます。

なぜホームインスペクションが条項に盛り込まれた?

それにしても、なぜ上記のような文言が新たに盛り込まれる事になったのでしょうか?

1つは、最近日本でインスペクションの普及が進みつつあるということが挙げられます。

インスペクションは元々海外で生まれたものでした。
1990年代のアメリカでは住宅の売買によってトラブルが起きやすく、裁判も頻繁に起こっており、それを防ぐために新たなシステムとしてホームインスペクションが求められ、急速に定着していきました。

日本で導入されたのは2000年以降のことです。

なぜここまで導入の時期に違いが生まれたかと言えば、日本の住環境が元々良かったということが挙げられるでしょう。
日本は災害が多い国として知られ、特に地震は頻繁に起こるため、耐震性の高い住居でなければ安全に住むことはできません。
そのため、あらかじめ綿密な建築が行われ、ホームインスペクションに頼らずとも質のいい住宅ができるシステムが整っていたのです。

しかし近年、中古住宅市場が急速に発達してきました。
新築の住宅に比べ価格が安いので人気がありますが、やはり建てられてから築年数が経過しているため、安全性の観点からは疑問が残ります。
特に2011年に起こった東日本大震災の影響により、中古住宅といえ安全性の高いものを選びたいというニーズはより高まり、中古住宅の購入検討者からホームインスペクションが求められるようになった、というわけなのです。

今後の課題は?

新たにできた法律によって、より誠実に建物売買が行われるようになったわけですが、まだまだ安心してはいけません。

たとえばインスペクターを不動産業者から斡旋してもらう場合、極端な例にはなりますが、インスペクターと不動産業者がグルになって嘘の情報を買主に送り付けるということもできてしまうでしょう。
もちろんその行為は犯罪ですから処罰されますが、買主はこうしたことを想定しながら住宅購入を検討しなければなりません。

ホームインスペクション先進国のアメリカでは、過去に不動産業者とインスペクターとの癒着が問題になりました。
これに対する一策として、「買主自身が信頼のできるインスペクターを見つけ、ホームインスペクションを依頼する」ということが当たり前になっています。

とは言え、すべての住宅購入検討者がホームインスペクションに対する知識を持っているとは言えません。
何も知らないまま住宅を買おうとして、契約前にはじめてホームインスペクションの存在を知らされた、という人も少なくないのです。
それゆえ国は、法律を改正するだけではなく、不動産業者などと協力してホームインスペクションの普及と共に、意義を広報していくのが課題となっていくでしょう。

また、日本では中古住宅の取引だけでも1年あたり10万戸以上が流通していると言われており、これに加えて新築住宅の戸数も考えれば、まだまだインスペクター(住宅診断士)の数が足りていないのが現状です。
ホームインスペクション自体が近年生まれたサービスですので、今後はもっとインスペクターを増やしていく必要があります。

まとめ

今回は宅地建物取引業法の改正内容を詳しく説明させていただきました。

私たちがより良い住まい探しをするうえで、法改正によってホームインスペクションがさらに便利になったと言えますが、まだまだ問題が残っています。
住宅を購入するにあたって、法の改正内容とホームインスペクションのサービス内容、そしてどうすれば安心、且つ安全に取引を行うことができるのかを自身がしっかりと考えていく必要があります。


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